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ティラナク

『ティナラクものがたり』




昔々、

ボイ・ヘヌーというティナラク織の始祖である姫が、

天空の若者、レムグットゥ・マンガイに恋をして、

天に昇りました。

地上の暮らしで使ったすべてのものを持って…。
しかし、自分が地上にいた証を残したくて、

ボグール・レムバックという

ティナラク織の道具を地上に投げ返しました。

それは、“フー”という鳥の姿に変わり、

今も夜になると

ティナラク織の伝統を絶やさないように、

と歌うそうです。
ボイ・ヘヌーは、

ティナラク織の模様を

地上の女性たちに思い起こさせるため、

ニシキヘビを地上に遣わしました。

さらに、ヘヌー自身も女性たちの夢の中に現れ、

今も織り込む模様を伝えている、ということです。



――ティボリの伝承より



◎ティナラク織とは


フィリピンの芭蕉布。

糸芭蕉(アバカ)の繊維を草木染し、地面に座って織る 「腰機(こしばた)」「原始機(げんしばた)」で手織りされた織物。

赤・黒・生成りの三色が伝統で、縦絣なので、横糸はすべて黒一色で織られます。

乾燥すると繊維が切れやすくなるため、朝夕の湿気の多い時間に織られます。

百種類以上の模様があり、織手さんたちは、夢のお告げを織り込む、といいます。

ティボリ民族の女性たちに代々受け継がれ、昔は一流の織手さんが「良い女」の 条件でした。

技術を獲得するのに時間がかかり、また中間業者が安く買い叩くため、現在は継承する人が減ってきています。

始めから終わりまでの全工程をひとりの人がやる織物は、世界でも残り少ないといわれています。

カレンダーのないティボリの歴史では、何百年続いてる織物なのか、本人たちも知りません。